【この地に眠るは清き水。清廉の使徒よ、この声届いたならば我の前に姿を現せ】




の声に応えるように現れたのは槍を持った女性の精霊。
水を統べる、ウンディーネ。





【女神マーテルの加護を持ちし者、私を呼んだのは貴方ですか?】


「ああ。オレは。大樹を守る為に貴女の力を貸して欲しい」


【…私の力がお役に立てるのなら。ディセンダー…いいえ、。よろしくお願いいたします】






ウンディーネが水の球をに向って飛ばす。
の腕輪に蒼い宝石が埋め込まれた。
それはまるでアクアマリンのように輝いている。






「ふう」

「これで精霊の封印も三つ目ね。お疲れ様、


リフィルから労いの言葉を受け取り、は大きく息を吐いた。



の腕輪に輝く石は三つ。
ヴォルト・ウンディーネ・シルフだ。
エメラルドのような澄んだ翠色の石がウンディーネの横にはめ込まれている。

ウンディーネと同じく風のモニュメントにて解放したシルフの石だ。




前回行った夢幻の砦にあった石版を再び達は取りに行き、手持ちの分だけでもと精霊を解き放つ旅に出たのだ。




「これでひとまず持っている分の石版は全て解放したんだな」

「この後はどうすんだよ?」

「大佐から受けたクエストしなくちゃ」

















三日前
―エヴァ―



、体調に異変はありませんか?」

「んー…大丈夫みたい」

「熱は無し、脈拍も正常ですね。後は体力の回復を待つだけですが…それも心配なさそうですね」



ジェイドの問診を終え、は体を伸ばす。
長いこと寝ていた所為か、関節がポキポキと音を出す。




「もう動いてもいい?」
「そうですね。程々になら体を動かした方が良いでしょう。リハビリがてらにね」
「そういえば、ジェイとセネルはどこ行ったの?」
「一度自分の街へ戻ると言ってましたよ。ガイがイクシフォスラーで送っていきました」

は着替えを済ませ、荷物を手に取る。
すると手に固い物が当たった。





「あ…」





それは石版だった。







「そういえば…」



自分は水のモニュメントを目指していた途中でエヴァに立ち寄った。
そして夢幻の砦へと向ったのだった。


その間に大樹が傷つけられ――…






「オレ、精霊の封印をときに行かなきゃ…」


?」


「だって今の大樹はマナが少なくなった所為で弱ってるんだろ?!…なら早く精霊を復活させなきゃ」
「落ち着きなさい、。確かに大樹は弱っていますが、精霊を甦らせるのは大仕事です。焦ってはいけません」

「あ…」



ジェイドに諭され、は冷静さを取り戻す。
優しく肩を叩くと、ジェイドは落ち着かせるように言った。




「今、貴方の手元にある石版はどこのものかわかりますね?」
「水の…モニュメント」
「そして、近くに石版がある場所もわかりますね?」
「夢幻の砦…」





「そうです。ということは今出来るのは夢幻の砦へと向かい石版を回収し、そして持っている石版から解放していくことです」






の瞳に光が宿る。





「…うん!ありがとうジェイド!!」

「お礼でしたら、1つ私の頼みを聞いて下さい」

「?」






























「“ヴィノセ国王陛下へ書簡を届けること”」


がそう言うと、スパーダの動きが止まった。
ガイもそれに気付いたのか、スパーダに視線を送る。





「ヴィノセ…結構な長旅ね。まあイクシフォスラーがあればすぐでしょうけど」

「一旦エヴァに戻って、大佐の部下の人と合流しなくちゃいけないんだ。その方がスムーズに謁見…」


「いや、このまま行こうぜ」



の言葉を遮ったのはスパーダだった。
ガイも目を見開いている。


「え?」

「それくらいなんとかならあ。行こうぜ、ヴィノセに」

「そうなの?じゃあ行こうか」




イクシフォスラーに乗り込む際、ガイがスパーダに耳打ちした。



「大丈夫なのか?…お前、ベルフォルマ家を飛び出してきたんだろう?」

「やっぱ気づいてたか。ガイラルディア伯爵」

「そりゃあな。社交界では噂の中心だぞ。“末の息子が世襲争いから逃げ出した”ってな」

「言いたい奴に言わせとけばいいんだよ。…俺ばっかり逃げてらんねえだろうが」



アイツはいつも俺らの為に頑張っているのに
















イクシフォスラーを飛ばし、見えてくるは大きな宮殿のある街“ヴィノセ”
宮殿の後ろを流れる滝は壮観で、三大王都一美しい街である。




「す…っごー…!なんだあれ!!水が縦に流れてる!!!」
「あれは滝って言うんだよ。は初めてなのか?」


窓の向こうの景色にはしゃぐとは相対的にスパーダは眉間に皺を寄せる。






「…こんな形で戻ってくるたあな」


その呟きは誰にも聞こえなかった。













ヴィノセに降り立った一行は国王陛下との謁見をすべく宮殿を目指した。





巨大な城門、並び立つ兵士。

入り口に近付く達を兵が止めた。








「どこの国の者だ?見かけない顔だな」



メンバーの服装を見て、兵士が言った。
確かに着ている物がバラバラな上に、この国の人達は比較的軽装な為達が余所者であることは一目瞭然だった。



「オレ達はアドリビトムの者です。陛下にお会いしたいんですけど…」

「謁見の約束は取り付けているか?」

「え、いや…」

「無いのならダメだ。帰るんだな」




門前払いされるの前にスパーダが立つ。






「おい、ベルフォルマの名を知らないわけじゃねーだろうが。良いから早く通しやがれ」


「ベルフォルマ……し、失礼いたしました!!」




スパーダの一言により兵士が道を開ける。

あっさり通されたことにより、皆が目を見開く。ガイを除いて。







「ついでにガルディオスも来たと、伝えてくれるかな」

「が、ガルディオス公爵まで…わ、わかりました!!」







兵士の一人がバタバタと中へ駆けて行く。

その間に達は奥へと案内される。








「な、なあスパーダ。ガイ…なんで?」

不思議そうに聞くの問には答えず、スパーダとガイは先へ進んでいく。











一番奥、大きな扉の前。


開け放たれた扉の向こう、玉座には一人の男が座っていた。














「よう、久し振りじゃねーの。随分フラフラ出歩いてたらしーじゃねえか」